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橘右京:血を吐く剣士と、摘めなかった花

サムライスピリッツ 2026-09-03 約4分

サムライスピリッツのキャラクターは一人ずつが猛者ばかりだが、橘右京だけは「病人」という印象だ。不治の病を抱え、血を吐きながら、それでも刀を提げて歩き回る。なのに、中国のプレイヤーが最も使いやすく、最も理不尽な性能を持つキャラクターの一人になった。

ケンカのために戦わない剣士

橘右京は没落した武家の出身で、師匠のもとで居合を学んだ。居合は「必殺の一撃、抜刀して立ち去る」ことを旨とする。彼には争いを好む心はなく、心にあるのはただ一人——小田桐圭だけだ。彼女のために魔界の花を摘もうと、病の身を押して魔界へ向かう道を選んだ。

この動機は格闘ゲーム史の中でも稀有だ。ほかの者は名誉のため、復讐のために戦う。彼は愛のために戦う。

残像斬、誰もが認める「反則技」

ゲーム内で橘右京の代名詞は残像斬と燕返しだ。古参プレイヤーなら誰でも知っている。近距離の残像はほぼ無限に連続でき、相手を押し殺してしまう「バグ級」の戦法で、上級者の対戦では彼を禁止するほどだった。当時の「初心者でも橘右京なら動かずに半分は勝てる」という冗談は、誇張とはいえ彼の強さをよく伝えている。

技がかっこよくて強い。しかも一途。橘右京が人気にならないはずがない。

その花は、結局摘めなかった

『真サムライスピリッツ』のエンディングで、橘右京は魔界の花を摘むために魔界の奥へ踏み込み、二度と戻らなかった。残された小田桐圭は、毎年雪の中でその花を眺めるだけだ。格闘ゲームにこんなに悲しい結末は珍しい。英雄は凱旋せず、語り終えぬ物語だけが残る。

病弱で、一途で、剣は鋭く、どこか切なさを纏う——それが橘右京、サムライスピリッツでいちばん胸が痛む剣士だ。