オロチとは何か?「地球の意志」は怪物ではない
『ザ・キング・オブ・ファイターズ』に触れたばかりの人は、誰しも同じ疑問を抱く。オロチとは一体何なのか、と。『ストリートファイター』みたいに地球を侵略する宇宙人か?それとも封印された古代の魔物か?答えは、どちらでもない。
オロチの格は、「ラスボス」よりもずっと上にある。それは地球そのものの意志なのだ。
人でもなく、怪物でもなく
オロチ編の設定によれば、オロチは遠い1800年前、大地の意志として生まれた。人類が繁殖し、自然を破壊し続けるのを見届けた末に、一つの結論へ行き着く——人間こそ地球の癌だと。そして「浄化」を決行する。人類を地上から消し去り、世界を最初の清らかな状態へ戻そうとしたのだ。
つまりオロチは「世界を支配」しようとしたのではない。「世界を洗い流そう」としたのだ。動機は欲でも野心でもなく、冷たく純粋な審判である。そこが、他の格闘ゲームの悪役たちとの最大の違いだ——オロチは「地球」の側に立ち、人類の敵側に立つ。
この設定が当時どれほど衝撃だったか
オロチ編の着想が、『KOF97』の物語に初めて「叙事詩」の風格をもたらした。それまでの格闘ゲームのボスは「お前の力が欲しい」「世界を支配する」の二通りばかりだったが、オロチ編が提示したのは「人類 vs 地球の意志」という命題だ。主人公たちは単に「悪者を倒す」のではなく、「人類の罪を償い、世界を救う」立場に立つ。
さらに巧いのは、オロチの力は拳脚だけに留まらないこと。オロチの血を持つ者——八神庵やレオナ——を自在に操れる。だからオロチ編の中盤は「反転とサスペンス」に満ちている。最強の味方が、いつ敵に変わるか分からない。
名前の由来
「オロチ」という名は、日本神話の八岐大蛇からそのまま取られている。制作陣は日本で最も有名な悪獣を、地球の意志の化身へと作り替えた。文化的な土台を踏まえつつ、まったく新しい解釈を加えたのである。
オロチは正義か悪か。この問いは二十数年経った今もなおファンの間で議論され続けている。そしてその「立場の曖昧さ」こそ、格闘ゲーム史上最も魅力的な悪役の一つたる所以だ。